集大成(2008年03月01日)

藤井 智子 (フジイ トモコ)
法学部政治学科
第47回「女子大生が行く!!湯めぐり探検隊in多摩」ディレクター

足を入れれば、たちどころに集まり角質を食べる魚。昔ながらの番台に座り、お客様と話を弾ませるおばあさん。六五〇年も昔から湧いている温泉の源泉。それらが全て、多摩にあることをご存知だろうか。私は多摩探検隊の活動を三年続けてきたが、こういった場所や人がいることを全く知らなかった。そんなバラエティーにとんだ場所をリポーターが訪れ紹介する、第四七回多摩探検隊「女子大生が行く!湯巡り探検隊」を、今回私は制作した。
 「三月放送は湯巡りでいこう」。まずテーマを決め、取材先を探した。その際に目に止まったのが、冒頭に記した三箇所である。
武蔵村山市では、フィッシュセラピーという少し変わったイベントを行っていた。大きな水槽のような所に足を浸けると、ガラルファという五センチほどの魚が寄ってきて、足の角質をついばむように食べてくれる。痛いようなくすぐったいような、なんとも不思議な感覚を味わえる催しである。ちなみに私は、あまりの衝撃に一分間水に足を浸けておく事が出来なかった。得手不得手はあるかもしれない。
 八王子には、五〇年間一度も立替えをしていないため、番台や風呂の壁画などが未だに存在し、銭湯へのイメージの期待を決して裏切らない、銭湯「四方の湯」がある。「四方からお客様が集まるように」という願いをこめて名付けた銭湯なのだと、五〇年間番台に座り続けるおばあさんは目を細めて語ってくれた。足を痛めて入院しても、まだ番台に座り続ける。それが生きがいなのだと話す彼女から強い誇りが伝わり、板張りの上で冷えた体にほんのりと温かみが差すのを感じた。
 そして最後に、奥多摩にある、六五〇年前から存在するという源泉「鶴の湯」を紹介した。
お風呂のレジャー施設がひしめく現代において、目を引くイベントを行い、客を引き寄せようとする武蔵村山。姿を変えず、昔ながらの空気感を大切にする八王子。そして、はるか昔から奥多摩の地にあり続けている鶴の湯。異なる時代背景をもつこの三箇所を繋げることで、視聴者に中だるみのない映像を提供できたのではないかと思う。
先日、四方の湯のおばあさんから連絡があり、「銭湯の壁画を描きかえるから、おいで」とのお誘いを受けた。壁画描き職人は東京でも数が少なく、非常に貴重な技を持っている。映像の編集の途中にも関わらず、その技見たさに私は八王子へと足を運んだ。下書きもなく、ダイレクトに壁に画を描いていく職人の手業に見とれ、見事に出来上がった富士山を見たときは思わずため息を洩らした。残念ながら、今回この職人を映像に組み込むことは出来なかったが、こうした職人に会う機会を作ってくれたおばあさんに感謝しつつ、段々と紡がれていく人との繋がりを嬉しく思った。
取材先と信頼関係を築き、周りの言葉に柔軟に対応することで、その都度演出や構成を変えていく。最初に描いた構成からころころと色を変え、進化していく映像の過程を見ることは映像を制作する者だけが味わえる醍醐味の一つのである。
 三年間絶えず多摩探検隊の活動を続けてきた身としては、多摩のネタには少々食傷気味の感があった。しかし就職活動を終え、三月放送のためにといざ多摩を歩いてみると、三年などでは測れないほどのネタがたくさん埋まっていた。きっと、これは多摩だけに限った話ではないだろう。地域には飽くことのない魅力が潜んでいるのだと、この撮影では再確認させてもらった。まだ、この活動を続けていく後輩たちが、今はうらやましくてしょうがない。
 FLPゼミに入って卒業まで、あっという間の日々だったが、多摩探検隊ディレクターとして、最後に映像を残す事が出来た。集大成として作り上げた「湯めぐり探検隊」は、視聴者の方々の心も体も温まるような映像になっていてほしい。そんな願いとたくさんの思い出を抱きながら、卒業していく自分を誇らしく思う。

投稿者 webmaster : 2008年03月01日 00:00|

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