支えてもらえる幸せ(2007年11月01日)

木村 美耶子 (キムラ ミヤコ) 
法学部政治学科
第43回「多摩まるかじり!!~陣馬りんご~」ディレクター

多摩探検隊の十一月放送が「多摩まるかじり~陣馬りんご~」になることは、夏休みに入る前からすでに決まっていた。シリーズ物で企画が通りやすかったことに加え、農作物は収穫時期が限られているので、早めに取材・撮影などができる状態にするためだった。
 私は正直、企画が通った時点で自分がディレクターになるとは思ってもいなかった。企画だけ通して、後は誰か別の人がやってくれるだろうと、全くもって無責任なことを考えていた。自分に自信のなかった私は、責任という言葉を背負うのが怖かったのだ。
しかし、予想に反して私はディレクターを務めることになった。情けないが、嬉しい気持ちより不安のほうが圧倒的に大きかった。やめたい、できないと何度思ったことだろう。
 そんな気持ちを抱えたままで訪れた事前取材。りんご農家の花井一男さん(八〇)は初対面の私たちに、熱心にりんご栽培のことを話してくださった。進む高齢化、病気、栽培の難しさ、食害。苦労が耐えない中で、続けてきたのはどうしてなのか。「りんご作りは私の生きがい。私からこれをとったら何も残らないんです」。彼は真剣な表情で言った。彼のこの言葉を聞いて初めて、私はこの人を取り上げた番組を作りたいと心から思えた。将来のことも、自分の適性も、何も見えていなかった私には、一つのことに長い間打ち込み続けている彼が眩しかった。だからこそ、「多摩に埋もれている魅力」である彼のことを、もっと多くの人に知ってもらいたいと強く思ったのだ。
不安はまだ残っていた。しかし、これは私に与えられたチャンスなのだと考えるようになった。最初のチャンスかもしれないし、最後のチャンスになってしまうかもしれない。だが、もらったチャンスは活かさなければもったいない。
構成表を何度も書き直して準備を進めたが、天候や収穫時期の問題で、撮影は大幅にずれ込んでしまった。最初の撮影予定日は雨で中止になり、結局初めて撮影に行ったのは十月に入ってからだった。そのため、通常、完成まで二、三ヶ月かかるところを、二週間で完成を目指すという厳しいスケジュールをこなさなければならないことになった。
 編集の“いろは”もわかっていなかった私には、気が遠くなりそうな話だった。それでも諦めずに最後まで頑張れたのは、いつも周りにはゼミ生がいてくれたからだ。たくさんの助言、励ましをもらい、何度も勇気づけられた。
 思えばこのVTRの制作中、私はどれほど多くの人に支えられていたのだろう。ずっと側にいてくれたゼミ生はもちろん、何度も撮影に応じてくれた花井さん、快く陣馬りんごについて教えてくれ、分厚い資料まで用意してくれた市役所の方、忙しい中、チェックをしてくださった先生、そして、夜遅く帰ってくる私を黙って見守ってくれた家族。どれか一つでも欠けていたら、おそらくこのVTRが完成することはなかっただろう。
 一人ではできないと思えることも、誰かの力を借りれば、思っていたよりもずっといいものにすることができる。この経験で、人のありがたみを改めて感じた。人に支えてもらえるという幸せを忘れずに、次は私が誰かの支えになりたい。

投稿者 webmaster : 2007年11月01日 12:00|

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