忘れがたい出会い(2007年04月01日)

堀 夏海 (ホリ ナツミ)
法学部政治学科
「2007昭島子ども放送局」プロデューサー

どうしてこんなにも強くひかれたのだろう。取材先のご主人たちと別れたあと、私は考えこんでいた。
出会いは昨年の11月に行われた昭島産業まつり。東京都昭島市にある、つつじが丘南小学校の6年生たちとの活動「昭島子ども放送局」での取材だった。「昭島子ども放送局」は、地域の隠れた魅力を再発見するプロジェクトで、子どもたちと取材や撮影、編集を行い、1つの番組を作り上げていく。
産業まつりで出店していたブースの中に、忙しそうに動き回る男性がいた。彼が「昭島ロール」の生みの親、「栄楽堂」のご主人である中村さんだった。昭島ロールとは、昭島の材料にこだわったロールケーキである。小麦粉の代わりに米の粉を用い、昭島産の卵、栗、梨などを使用しているのだという。試食したレポーターの子どもは、なんとも幸せそうな表情でロールケーキを頬張っていた。
今年の1月。第2回「昭島子ども放送局」に向け、昭島の町の取材に出かけた。子どもたちがレポートする町のネタを事前に見つけておくのである。私は「栄楽堂」の事前取材を希望した。それは、子どもたちが1度関わったネタなので、レポートしやすいのではないかという気持ちからであった。店に向かうと、ご主人と奥さんが快く向かえてくれた。
ご主人は30年以上も店を構え、人との出会いを大切にし、そこに喜びや楽しみを見出だしながら仕事を続けてきた。私たちが「大変なことは?」と問うと、ご主人は「無い」ときっぱり答えた。「大変だと思ったら、やらない方がいい。本当に大変だと思ったとき、仕事は終りなのだ」。優しい瞳の奥にある、強い意志を見た気がした。
生産者の顔が見え、消費者にとって安心な地元の素材。ご主人は卵や果物だけでなく、野菜なども使い、日々試行錯誤している。それを支える奥さんは、ご主人のことを「仕事を本当に頑張る人」といい、一方のご主人は、奥さんのことを「なくてはならない存在だ」と照れながら話してくれた。私は、その話を聞きながら、心が揺さぶられる思いがした。
そして、話は冒頭に戻るのだ。どうしてこんなにも強くひかれたのだろう。それはきっと、ご主人の「思い」に触れることができたからではないだろうか。もしかしたら、このお店の、そしてこのご夫婦の魅力を伝えられるのは私だけなのではないだろうか、と感じた。絶対に埋もれさせてはいけない「思い」がここにはあると確信した。
第2回「昭島子ども放送局」を終え、出来あがったVTRを店に届けると、番組を見て昭島ロールを買いにきたという女性に遭遇した。嬉しさと共に、番組の影響力に驚きもした。開発が進む町で、進化を模索し続ける店。しかし、その熱い「思い」は何一つ変わることはない。ご主人に負けないような、ゆるぎない信念。私は見つけられるだろうか。きっと見つけてやる。密かな決意を胸に、私は店を後にした。

投稿者 webmaster : 2007年04月01日 12:00|

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