笑顔あふれる田村酒造をVTRで表現(2007年02月01日)

三枝 健介 (サエグサ ケンスケ)
総合政策学部政策科学科
第34回「シリーズ多摩の酒 ④ 田村酒造」ディレクター

私たちのゼミでは、毎月「多摩探検隊」という10分間の地域再発見番組を制作し、多摩地域のケーブルテレビ5局ネットで放送している。多摩地域に埋もれている話題、人物、物語を掘り起こし、それにまつわる感動を伝えていこうというものだ。この「多摩探検隊」で2年前から、名物企画として制作されてきたのが「シリーズ多摩の酒」である。私が今回制作したVTRは、その第4弾にあたる。

皆さんは、日本の首都・東京に13もの蔵元があることをご存知だろうか。「大都会で酒造り?」「東京の地酒?」と思うかもしれないが、実はその歴史は古く、昔ながらの味や伝統もしっかりと守られている。今ならそう言える私も、制作が決まった当初は「東京の酒蔵なんて・・・」とか、「日本酒は古臭いなあ」と少なからず思っていた。そして、日本酒という飲み物自体にも興味をそそられないというのが正直なところだった。

しかし、実際に福生市にある田村酒造(1822年創業)という酒蔵を訪れ、見学、取材をしてみると、そんな思いは一瞬にして変わった。今まで画面の中でしか見たことのなかった酒蔵は、好奇心をそそられる物でいっぱいだった。酒蔵全体に漂う甘い米の香り、麹を作る「麹室(こうじむろ)」の蒸し暑さ、そして酒造りに打ち込む人々の熱い思い。そんな情報の全てを、「現場」で、「生の声」で体験、受け止めることが出来た。書籍やネットの情報ではなく、一次情報を受け止め、即座に自分の疑問・好奇心をぶつけられる取材は非常に新鮮で、楽しいものだった。

取材の成功に安堵していた私であったが、実は本当の勝負はそこから。自らが取材した項目を整理し、どう伝えるか、どう物語を構成していくかを決めるのが最も大変なのである。「自分が何を伝えたいのか」を、ひたすら考える時期が続いた。この時、役に立ったのが過去の先輩方が作った酒シリーズのVTRだった。普通に見てしまえばそれまでかもしれないが、自ら取材をしてみると視点が変わるものである。それぞれの酒蔵には、それぞれの色が、思いがある。

そんな事に気づいた時、ふと取材で聞いた話を思い出した。田村酒造の酒名の由来は、創業当時に敷地内で掘り当てられた井戸にある。苦労の末、掘り当てられたその井戸は酒造りに最適の水質で、周りの人々は大いに喜んだと言う。その「喜ぶべき泉」から、現在の酒名、『嘉泉(かせん)』が生まれたのだという。
 そしてまた、酒造りの最高責任者である杜氏さんは、『酒造りとは笑顔である』と語っていた。自分たちが笑顔で良い酒をつくり、それをお客さんが「旨い」といって笑いながら飲んでくれる。それが一番理想のお酒造りであり、それを目指して日々頑張っているのだという。今も昔も笑顔であふれる田村酒造。それこそが、このVTRで表現できることであると私は気づいた。

10月半ばの取材・撮影から、2月の放送までの4ヶ月。なかなか上手く繋がらず、伝えたいことが揺らいでしまった時期もあった。出来上がったと思ったVTRに、先輩から厳しい批評をもらったりもした。しかし、今は完成したVTRを見て、私自身も笑顔になれる。
今の私の楽しみは、自分の作ったVTRを肴に日本酒を飲むことかもしれない。

投稿者 webmaster : 2007年02月01日 10:00|

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