「ありがとう」は魔法の言葉(2006年11月01日)

平澤 恵梨 (ヒラサワ エリ)
総合政策学部政策科学科
第31回「ありがとう ~勤労感謝の日~」ディレクター

ようやく夏が終わり、秋雨が降り始めた9月下旬。私は番組プロデューサーから多摩探検隊の「ありがとう」のディレクターに指名された。「ありがとう」のVTRは、多摩探検隊至上第12作目になる。ついに自分も作れるのかと思い、どんなテーマにしようか、どこで撮影しようか、どんな人にインタビューしようかと考えた。ありがとうの撮影が楽しみで仕方がなかった。

しかしそんな私の気持ちをよそに、雨は一向に止む気配がない。中々撮影日が決まらず、天気予報と睨めっこをする日々が続いた。電車に乗り「今日もダメか」と、窓の外を眺めていると突然、厚い雲の隙間から太陽の光が差し込み始めた。「今しかない!」。そう思い立ち、すぐに撮影に向かった。時間はもう12時を回っている。日が落ちる前に撮影を終えなければ。そんな焦りが胸を突いたが、まちに待った撮影だったのでいつのまにか撮影が楽しみになっていた。

今回のテーマは、放送日が11月ということで勤労感謝にちなんだものだ。働いている人へ、また、働いている人からのメッセージなどを撮影することにした。撮影場所に選んだ多摩センターの公園には子供からお年寄りまでたくさんの人がいて、多くの人のメッセージを聞くことが出来た。

私と同年代で、働き始めて1年目という女性がいた。彼女は社会人になって初めて働く大変さを身にしみて感じ、いつも自分の為に働いてくれた両親に「ありがとう」と伝えた。彼女に別れを告げながら、私は父に、自分の素直な気持ちを告げた日のことを思い出していた。

私は常に、両親から「少しは感謝しろ!」と言われる。しかしその言葉は照れくさくて中々素直に言うことができない。いつも強い口調で生意気ばかり言ってしまう。そんな私だが、去年の父の日に「いつもありがとう」と父に告げ、花をあげた。言い終えた後は、涙がこぼれそうになった。心が暖かくなり自然と笑顔になれた。父も満面の笑みで「ありがとう」と言ってくれた。それから、前よりも父と色々話すようになったように思う。たった一言で私と父はより心をつなぐことができたのだ。「ありがとう」という言葉は、自分との関係が近ければ近いほど簡単に言えない言葉である。けれどその言葉を発すると、自然と笑顔がこぼれ、人の心を暖かくすることができる。ありがとうとはそんな不思議な力を持つ、魔法の言葉だと思った。
だんだんと日も暮れ始め、撮影を終えた。体は疲れ、声も枯れていたが気持ちは晴れやかだった。みんなのメッセージを早く届けたい、そんな思いで胸がいっぱいになった。届けることで誰かに暖かな気持ちを感じてもらうことが出来るかもしれない。それはお金には代えられないかけがえのない価値があるだろう。そんな可能性を持っている多摩探検隊が、今回の制作を通してまた好きになった。

投稿者 webmaster : 2006年11月01日 12:00|

コメント

コメントしてください




保存しますか?