「タマタン」とシューカツのあいだ(2006年11月03日)

鈴木 千佳 (スズキ チカ)
文学部文学科英米文学専攻
第31回「手作りこんにゃく物語-八王子-」プロデューサー

「リクルートスーツ買った?」「今日の企業説明会行く?」

友人達の間でそんな会話が飛び交い始めた頃、私はカメラと三脚を手に多摩を歩き回っていた。「多摩探検隊」第31回の撮影のためだ。ゼミのメンバーからも「どうしてこの時期に番組プロデューサーを?」という疑問を毎日のように投げかけられた。焦りがなかったと言えば嘘になるが、私の中には揺るぎない決意があった。

日中は担当ディレクターと共に取材や企画・構成会議、夜は就職活動のための勉強。この生活が約一ヶ月半続いた。夜九時頃になって「そういえば今日何も食べていなかった」と気づき、そんな自分に驚いた日もあった。同じ部活の後輩には「やつれましたね」と言われる始末。体重は3kg程減っていた。この辛い時期に私を支えてくれたのが、ゼミの仲間であり、「辛くても成し遂げたいことがあるというのは素晴らしいことではないか」という思いであった。

今回私たちが取材したのは、八王子市にあるこんにゃく屋。明治14年創業の「中野屋商店」だ。このお店では、昔ながらの製法にこだわってこんにゃくを作っている。私が初めてこのお店を訪れたのは、九月の上旬であった。「決算期で忙しい」という理由でディレクターが一度取材を断られていたのだが、何とか許可をいただこうと直接お店を訪ねた。私たちが企画の趣旨などを熱心に説明すると、とうとうご主人から撮影の許可が下りた。既に放送まで二ヶ月を切っていたので、そのときの喜びはひとしおだった。

しかし、撮影は難航した。売り場を任されている奥さんがご主人について「一分一秒を争う仕事なので、声もかけられない状態です」と話すように、こんにゃくを作っている時のご主人は真剣そのもの。その作業の最中に私たちはカメラを回しインタビューをさせていただく。申し訳ない気持ちと仕事中の生の声を聞きたいという気持ちが、私の中で複雑に絡み合っていた。ある日、こんにゃく芋の独特な匂いが漂う仕事場で、ご主人と二人きりになった。私はミニサイズのこんにゃくを指差し、こう言った。「ひとり暮らしの私などには、すごく助かります」。照れくさそうにはにかむご主人を見て、精一杯番組を作ろうと心に誓った。

お店での撮影が終わっても、いくつか課題があった。番組の構成をどのようにするべきか悩み、それが決まった後もコーナーの長さがなかなか確定せず焦る。そんな中でのスタジオ撮影。スタジオが暗いので、ゼミのメンバーと共に照明を運び込み、追加撮影は絶対しないという意気込みで臨んだ。その結果、撮影を一度で済ませることができた。そして10月20日、完全パッケージ化。そのとき仲間から差し伸べられた手を強く握り返した私には、就職活動がスロースタートになってしまったことへの後悔は微塵もなかった。
揺るぎない思いで作り上げた「タマタン」第31回。この達成感を心の糧として、私はこれからの就職活動に挑んでいきたいと思う。

投稿者 webmaster : 2006年11月03日 12:00|

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