語ってもらうこと(2006年11月02日)

中島 聡 (ナカジマ ソウ)
総合政策学部政策学科
第31回「手作りこんにゃく物語-八王子-」ディレクター

私たちの食卓に何気なく並ぶ「こんにゃく」。私は今回ディレクターとして、こんにゃくを作り続けている職人さんを取り上げた。八王子にあるこんにゃく屋、中野屋商店。創業した明治14年からこんにゃくを作り続け、現在4代目としてお店を切り盛りしているのが石坂清さんだ。取材初日、作業場にいる清さんに話しかけると出鼻をくじかれた。

「作業しながら話せるわけないだろ!」

中野屋商店では、手作りのこんにゃくにこだわっている。全てを機械に任せ、オートマッチックに仕上げる方法と違い、その日の温度、湿度、こんにゃくの芽の開き具合などに合わせて、一つ一つ手で確認しながらこんにゃくを作っていく。微妙な作業となるため、話しながらでは気が散るし、清さん自身が一人で黙々と作業を行いたい職人気質なのだ。
加えて、私という人間をまだ受け入れてもらえていなかった。

こうして、職人気質とお店の忙しさも重なり、インタビューを撮れない不安な日々が続いた。しかし、私はディレクターという立場である以上、清さんのインタビューを撮らないわけにはいかない。彼のこんにゃく作りに対する思いがVTRの根幹であり、それなしで完成はありえない。焦る気持ちはあったが、彼の職人気質を考えれば受け入れてもらえるまで通い続けるしかないと心に決めていた。

作業場ではこちらからは話しかけない。職人の見習いになったつもりでひたすら作業を見る。清さんはなかなか口を開かなかったが、私が作業場に入ることは一切拒まなかった。カメラを回しても一切文句を言わず、黙々とこんにゃくを作り続けている。そのおかげもあって、こんにゃく作りの流れがよくわかったし、何より清さんのこんにゃく作りに取り組む真剣な姿を見ることができ、ますます彼の口から思いが聞きたいという気持ちが強くなった。

そして、その日は突然やってきた。私はいつものように作業場で働く清さんをじっと見つめていた。彼は一連の作業を終えると大きく背伸びして、ため息混じりにこう言った。

「あんたも好きだね~どこでインタビュー撮るの?」

ご主人に受け入れてもらえた瞬間だった。私はその後ご主人のインタビューを撮り終え、無事にVTRも完成した。

人に自身の思いを語ってもらうことは難しい。まず、聞く側が受け入れてもらわなければいけないし、人によってはたくさんの時間が必要とする場合もあるからだ。それでも、「多摩探検隊」は聞くことを止めない。なぜなら、一人一人の語る思いにこそ伝えるべきことがあり、魅力が隠れていると信じているからだ。

投稿者 webmaster : 2006年11月02日 12:00|

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