10分に込められる想い(2006年10月02日)

原 大士 (ハラ ダイジ)
総合政策学部国際政策文化学科
第30回「多摩の手作り醤油」ディレクター

「自分が制作した作品はとても大切に感じるよ」多摩探検隊でディレクターを務めた人が必ず言う言葉である。今回、初めて私もディレクターを務めた。ディレクターを務めるためには、まず、企画書を書くためのネタを探してこなければならない。私は必死でネタを探していた。それは、同級生が次々と作品を制作しており、1本も制作していない私は「みんなに遅れをとっている」と感じていたからだ。

私はネタを探す際にあるキーワードをいつも頭においていた。「多摩に根付いたもの」「歴史あるもの」「心温まる物語があるもの」の3つである。それに当てはまったのが近藤醸造という醤油屋だった。近藤醸造は100年の歴史を迎えようとしている老舗で、原料に多摩の井戸水を使用し、親子で醤油造りをしていたのだ。私はすぐに取材に出かけた。実際に話を聞いてみると、そろそろ引継ぎをしようかと考えているや醤油造りにかける想いなどがわかり、それを企画書にまとめゼミの会議に提出した。企画はすぐに通り、撮影の許可がおりた。しかし、撮りたいと考えていた醤油造りの工程が、その時行われていなかったため、撮影が4ヶ月も先になってしまったのである。私はその4ヶ月を利用して、撮影の準備をしっかりとすることにした。

撮影は準備の甲斐あって、順調に終えることができた。撮影スタッフからも「これなら大丈夫だろう」という言葉もあって、翌日から意気込んで編集作業に入った。事前に考えていた構成通りに撮影も行えていたので、作品の骨格ができるまでさほど時間がかからなかった。一通り編集し終わって、私は重大なミスを犯していたことを知った。伝えたいことがまとまっておらず、映像を見ても何を伝えたいのかまったくわからなかったのだ。それを先輩に指摘された。あれも撮っておけばよかった。これも撮っておけばよかった。後悔の連続だった。このままでは作品が出来上がらないということになり、私は再度、近藤醸造にお願いをし、撮影させてもらった。
その日は、必要なものだけを撮り、すぐに引き上げてくるつもりだった。撮影が終わり挨拶をして帰ろうとしたとき、従業員の方に声をかけられた「もうすぐ完成するでしょ?」と。私は返事を濁すことで精一杯だった。今思えば、私はあの「もうすぐ完成するでしょ?」という言葉に支えられて、この作品を完成させたように思う。その言葉は重圧でもあったが、この作品が自分だけの作品ではないことをあらためて教えてくれた言葉でもあった。

ディレクターを務めた先輩達は「一人では完成させることができなかった」と言う。私も作品を完成させ、それを実感している。ディレクターの仕事は、自分の想いだけでなく、取材先の人、協力してくれた人の想いを作品につめることだろうと思う。そして、10分という短い時間の中に、多くの人の気持ちが込められているのが「多摩探検隊」というものなのだと感じた。

投稿者 webmaster : 2006年10月02日 12:00|

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