伝えたい気持ち(2006年09月01日)

堀 夏海 (ホリ ナツミ)
法学部政治学科
第29回「ごめんなさい ~声に出して伝えよう~」ディレクター

ゼミに入って半月。初めての作品として一般の方にお話を聞き、それをまとめたVTRを作ることになった。普段は言いたくてもなかなか伝えることのできない気持ち、ごめんなさい。親しい人にこそ伝えにくいその思いを、カメラに向かって話してもらおう。そう決めたのは、四月の終わりのことだった。

五月の祝日。よく晴れたその日は、夏のような陽気だった。映像制作の指導をしてくれるゼミ生二人とともに、人でにぎわう多摩中央公園に出かけた。最初は、インタビューを撮るのは簡単なことだろうと軽く考えていたが、現実は甘くはなかった。まず、どのように声をかければいいのかが分からない。二人のあとについて公園の中をぐるぐると歩き回った。だんだんと慣れ、声をかけられるようになっても何人もの人に断られた。「自分には謝るようなことが何もないから。」そう言う人も多く、その言葉に驚くとともに、企画自体に無理があったのだろうかと心配になった。

撮影のために歩き続け、私もゼミ生二人も少し疲れが出始めた頃。公園の中にある池でのカヌー体験を発見した。公園で座っている人に話を聞くだけではなく、カヌーに乗っている人のインタビューが撮れれば動きがあって面白いのではないか。そう思った私たちはさっそく撮影の許可をもらい、二つのカヌーで池の真ん中へと漕ぎ出した。しかし、カメラの位置を決めても、風でカヌーが流されなかなかうまくいかない。予想以上の揺れでカメラを池に落としそうになったりもした。しかし、インタビューを受けていただいたインストラクターの方の協力で、なんとか納得のいく映像をカメラに収めることができた。その場で面白いと思ったことを、その場の判断で実行に移すことの大切さを知ることができた瞬間であった。カヌーでのインタビューは、VTRの中で意外性と画面に動きを与えてくれた。

つづいて、レジャーシートの上に仲良く座る一組のご夫婦に声をかけたところ、快く撮影の許可をして下さった。奥さんは旦那さんにごめんなさいを伝えてくれた。「いつもわがままばかり言いましてすいません。ごめんなさい。これからはちょっと優しくなろうかと思っています」奥さんが優しくそう言うと、旦那さんは照れたように笑った。カメラ越しにお二人を見ていた私は、心の中がじーんと温かくなった。胸にしまいがちな思いを声に出して伝えることによって、こんなに素敵な笑顔になれるのだ。私はこの幸せな笑顔を撮りたかった。この企画にしてよかった、心の底からそう思った。

この作品を見た人が、自分の大切な人に、普段は言えない気持ちを素直に伝えたいと思ってもらえれば幸せである。そして、私はこの作品を作っているときの気持ち、誰かに笑顔を届けたいという思いを忘れずに、前に進んでいきたいと思う。

投稿者 webmaster : 2006年09月01日 12:00|

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