それでもマイクを離さない(2006年06月01日)

中島 聡 (ナカジマ ソウ)
総合政策学部政策学科
第26回「多摩の野生動物ムササビを探せ!!」キャスター

今回、私はレポーターとして番組に関わった。振り返れば、この作品に関われて心から幸せだった。だが、正直に言うとマイクを握る手を何度離そうと思ったかわからない。

ムササビに恋焦がれて約半年。高尾山には30回以上登り、かかった費用は簡単に計算しても5万円を超える。バイト代は、ほとんど高尾山への交通費に投資された。辛さは金銭面だけではない。高尾山での撮影は想像以上に体力を使う。自然を、山を、野生の動物をなめてはいけない。ムササビの撮影は、木に葉が生い茂る前の冬が最適という。寒さで震える体を押え、ムササビを待つ毎日。グルルーと鳴き声がすれば、そちらに向かって走っていく。何度あの鳴き声が夢に出てきたことか。グルルーグルルーグルルー。
 
ムササビは夜行性なので撮影も当然夜間に行う。下山時間は、夜の9時。山をなめてはいけないが、夜の山はもっとなめてはいけない。もはや、山を下るケーブルカーはない。5メートル先も見えない山道を、懐中電灯だけを頼りに歩いていく。時に雪の山道を滑って転び、時に何の動物かもわからない鳴き声におびえながら歩いていく。慎重で低姿勢な下山は想像以上に時間がかかり、体力を奪われる。
 
家に着く時間は、0時過ぎ。ムササビが見られなければ、次の日も高尾山へ向かう。いや、正確に言えば「撮れなければ」だ。いくらムササビを見られても、カメラに収まらなければムササビは存在しないのと同じこと。「あっ、飛んだ!」「カメラは?」「撮れなかった」こんな会話が何度も繰り返された。その度にため息が漏れる。私たちはムササビを存在させるため、高尾山へ通い続けた。

加えてレポーターを悩ますのは服装だ。同じジャージで高尾山へ向かう。いつものジャージでいつもの高尾山へ。これが私の日課だった。撮影日が連続すれば、同じジャージを着なければならないので、洗うことはできない。 

このように撮影に関しては辛いエピソードが多い。もう何度ダメだと思ったかわからない。しかし、それでも私はマイクを、仲間はカメラを離さなかった。どんなに辛くても「楽しい」という根っこの部分は一度も揺るがなかったからだ。確かに番組制作は楽しいという気持ちだけでやってはいけない。しかし、それ以上に大切なもの、私たちを突き動かすもの、それが楽しいと思う感情なのだ。楽しいという感情は常に他の感情に押しつぶされそうになる。楽をしたい、辛い、もう無理だといった感情に負けてしまえば、楽しいという感情は決して味わえない。どんなに強い雪が吹こうとも、その根っこだけは崩れなかった。まさにこれこそが番組制作の根幹なのだと感じた。

「多摩探検隊」は今年で2周年を迎えたが、野生の動物を取り上げたのは初めてだ。こうして「多摩探検隊」にまた新たな1ページが刻まれたのだ。私は、そして仲間たちは、これからも新たなページを刻み込む。そのためにマイクもカメラも離さない。

投稿者 webmaster : 2006年06月01日 12:00|

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