あなたと過ごした二ヶ月(2005年10月01日)

森 友香梨 (モリ ユカリ)
総合政策学部国際政策文化学科
第18回「親子でつなぐ 手作りとうふ」ディレクター

自分の好物を一つ思い浮かべていただきたい。酒でもお菓子でも何でもいい。だが、もし自分の好きなものと二ヶ月間、一日中顔を向き合わせなければならないとしたら、どうするか。飽きる人、別に苦にならない人、それともそんなこと想像がつかない人に分かれるだろうか。私自身、そんなこと考えたことなかった。しかし、私は実際に経験することになったのである。

ゼミに入って二ヶ月、私は初めてディレクターを務めることになった。私が取材先に選んだのは、高幡不動駅近くに建つお豆腐屋。自分がお豆腐好きだからという理由であった。まあ、実際はそれだけが理由ではない。このお店が消泡剤を使わずに豆腐を作っているということを知って興味を持ったことが一番の理由である。

皆さんは豆腐作りの過程をご存知だろうか。簡単に説明すると、まず豆を摩り下ろして液状にする。次に煮立てる。そしてその煮汁を絞っておからと豆乳に分離し、にがりをうって蒸すのである。だが、煮立てるときに泡が立つと、生産性も落ちる上に出来上がった豆腐の味が落ち、日持ちも悪くなってしまう。それを防ぐのに発明されたのが消泡剤である。

「おもしろい」私は思った。お豆腐を食べる人は多いだろう。だが、いったいどのくらいの人がこの「消泡剤」の存在を知っているだろうか。消泡剤を使って製造するのと使わないのでは、実際に何が違うのだろうか。いつの間にか私の頭の中は豆腐でいっぱいになっていった。

撮影を終えて編集し始めた頃、時はすでに夏休みに突入していた。だが、私はほとんど毎日学校の演習室に通って編集して、一日中パソコンの画面に写る豆腐とにらめっこをした。いくら豆腐好きとはいえ、毎日見ていたら飽きも来る。編集がうまくいかなくなると豆腐が憎たらしくなり見たくもなくなった。何度も投げ出したくなったが、そのたびに取材先のご主人の一言を思い出した。
「どうせ作るなら一緒に良いものを作ろう」
取材を通じて、消泡剤を使わないで作るお豆腐は、確かにおいしいが非常に手間がかかることがわかった。だが、水・大豆・にがりだけで作り続けたい―撮影を通じて、彼らがどれだけ味と安全にこだわっているかを知った。良いものを作るのに妥協しない。それは私の取材でも一緒だった。「絶対完成させてご主人に見せよう」意地とその考えだけでなんとか完成させた。

多摩探検隊で放送されてから数日後、店を訪ねてみた。するとご主人をはじめみんなが喜んでくれた。その姿を見て、この二ヶ月が報われる思いがした。帰り際ご主人が「これからも頑張れよ」と言いながら持たせてくれた豆腐を、これからもいい作品が作れるように頑張ろうと思いながら私は頂いた。食べる前に箸をとめてその白くて四角い物体を見つめた。今や憎たらしさも失せていた。やはり私はどんなことがあってもこいつが好きなようである。

投稿者 webmaster : 2005年10月01日 12:21|

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